« 井草八幡宮へ | トップページ | グラタンとカンパーニュと玉川上水 »

旅行3日目・夕方/ケツの穴のちっちゃい女編

だいぶ間が空いちまったなぁー。
これまでのあらすじは→コチラ
 

 さて、ハウス・オブ・セントサを出ると、おっちゃんは、もと来た道を戻るようにまたトライショーをこぎ始めた。

 
 途中、「ここは大きなスーパーが並ぶ通りだ」とか、「これはなにがしの寺院だ」とか、簡単に説明してくれるんだけど、私は適当に聞き流しながら、マラッカの町の風景を眺めていた。
 

Img_2343
 

 おっちゃんは、さすがに生まれも育ちもマラッカというだけあって知り合いが多いらしく、通りすぎる人たちとよく挨拶を交わしていて、その人たちが私にも挨拶してくれるのが、ちょっとうれしかった。
 

Img_2348
 
Img_2349
 

 そんなぶらり旅の途中、突然、何の前触れもなくトライショーが止まった。

 
 見れば、目の前には小さな喫茶店があった。喫茶店といっても半分、屋台のような、オープンエアのお店である。おっちゃんは「のどが渇いただろうから、ここで休んでいこう。ここはよく知ってる店だから、安心だ。値段も安いし」といって、私を店内へとうながした。
 

 内心、「えっ、喫茶店なんて行かなくていいんだけど。それよりもっと色んなところを回ってよ」と思ったのだが、のどがかなり渇いていたのは事実だった。観光客向けではない、地元の人が行くような喫茶店に入れることのうれしさも手伝って、結局、私は席に座った。さっとのどをうるおしたら、 またすぐ観光に戻ろうと思った。「きっと、おっちゃんの注文の支払いも私がするんだろうなー」とも思ったが、まあ、ガイドしてくれたおっちゃんへのチップだと思って受け入れることにした。
 

 店には、店員の女性が2人いた。おっちゃんの知り合いだという。カタコトの英語で少し会話をかわしたが、とても感じのいい人たちだった。私のことを「かわいい」と言ってくれたので、ますます感じがいいと思った。
 

 私はアイスコーヒーを注文した。今思えば、タイではかき氷を食べて変なウイルスもらってきたというのに、よくもまあ、また氷入りのドリンクを頼んだものだな……。おっちゃんは、温かい紅茶のようなものを注文していた。「年取ると、冷たいもんがダメになるんだよ」と言っていた。
 

Img_2347
 

 飲み物だけ飲めば十分だったのだが、ふと気付くと、おっちゃんは店の前の陳列ケースに並んだお菓子を取りに行っている。おいおい、それも私が払うんだろう! しかも別にお腹すいてないんだけど! 内心そう思ったが、根がいい人な私は結局「まあいいか」と思って、お菓子もいただくことにした。2種類あって、片方はピサンゴレン(揚げバナナ)だった。もう片方は忘れた。特別においしくはないけど、屋台の味。好きな味。
 

Img_2346_2
アイスコーヒーとピサンゴレン

 
 アイスコーヒーを半分ほど飲んだところで、「さ、行こう」とおっちゃんを促した。なにせ、トライショーの金額は「1時間40リンギ」である。こんなところでムダに時間をつぶしている暇はない。この時、おっちゃんが「もう行くのかよ」という、若干、不服そうな顔をした……ような気がした。 
 

 自分とおっちゃんの分のドリンク代、お菓子代を払い、喫茶店を出て、再びトライショーに乗り込んだ。この先の目的地について、おっちゃんがしきりに「アイオン、アイオン」と言っている。このオッサン何言ってんだ?……としばし考えて、Eye onのことだとわかった。マラッカにはEye on Malaysia(アイ・オン・マレーシア)という巨大観覧車があるのだ。
 
 
 観覧車は割と好きな私だが、このときは特に乗りたいと思わなかった(一人だし)。それより何より、アイオンまでははかなり距離があるのだ。トライショーで行ったら、どんなに速くても町中から15分はかかるはず。観覧車に乗って、また帰りもトライショーで町中に戻ったら、それだけで1時間=40リンギである。無理、無理! 丁重にお断りして、とりあえず町中に戻ってもらった。
 

Img_2362
 

 それからおっちゃんは、私を町中にあるいくつかの寺院に連れていってくれた。おっちゃんは寺院の入り口で簡単に説明を述べたり、私の写真を撮ったりしてくれた後、入り口のあたりに座って「後は自由に見ておいで」と言う。
 

 このとき、彼は「Slowly, Slowly.」と何度も言ったのである。
 

 ごゆっくり、つまり、「Take your time.」と言いたかったのだろう。ただ、英語があまり得意でない彼は、決定的に言葉の選び方を間違えていた。その「Slowly」という単語は、「なるべく時間をかけて見てこい」という、ある意味、彼の本来の気持ちをとても正しく表してしまっていたのだ。この「Slowly」のひとことで、私はようやく、ここにきてようやく、彼の本心を悟ったのだった。すなわち、「この客は金づるだから、できるだけ時間を稼いで儲けてやろう」である。
 

 一気にやる気がうせた。もちろん、彼はトライショーを漕いで生計を立てているわけなので、「できるだけ時間を稼いで儲けてやろう」と思うのは、当たり前のことだ。理解できないわけじゃない。だけど、なんだか、とてもいい人であるように見えたのに、私もそこそこおっちゃんとの交流を楽しんでいたのに、心の底ではやっぱり「金づる」と思われていたのかよ、と思ったら怒りがわいてきたのである。そして、今の今までぼんやりトライショーに乗せられるがままになっていて、そんなことに気付かなかった私のアホさ加減にも腹が立ったのである。
 

 私は、寺院を超スピードで見て回り、速攻で入り口に戻ってきた。もう、トライショーを降りる気まんまんだった。それなら、「じゃあここでサヨナラ」とその場で言えばよかったのだが、「オランダ広場まで乗せてって」と言ってしまうところがまた私のさらにアホなところである。そのときいた場所からオランダ広場まで、せいぜい5〜7分ほどの距離だったと思うが、しっかり15分ぶんを上乗せして請求された。合計1時間45分で、70リンギだという。
 

Img_2359
一応、お愛想程度に寺院の2階に上った

 
 もともと1時間だけ乗って、40リンギだけ支払うつもりでいたのに、なんでこんなにうかつだったんだろう! しかも、出発時間をチェックしておくことすらしなかったので、もしも時間をサバ読まれていたとしても抗議すらできない。まさに「いいカモ」である……。ものすごく腹が立ったので、露骨にいやな顔をしてやった。交渉して5リンギまけてもらったけど、合計65リンギである。
 

 プリプリしながらおっちゃんに金を払い、険悪なムードで別れた。しかし、よく考えてみれば、おっちゃんはそこまでアクドイことをしたわけじゃない。ただちょっと、ゆっくり回って多めに稼ごうとしただけなんである。むしろ、最初にしっかり「1時間オンリー、40リンギだけね! わかった?」と断言しておかなかった、そして、途中で時間をしっかり見ておかなかった私のほうのミスである。
 

 ここまでの私の後悔っぷりを読んで「さぞかし大金をまきあげられたのだろう」と思う向きもあるかもしれないが、40リンギって日本円で約1100円である。65リンギは約1700円。その差額のたった600円のことで、私はこれだけぐちぐち、長々と書き連ねているのである。ちっちゃい。じつにケツの穴のちっちゃい女だ。600円ぐらい、笑顔でおっちゃんにやったれよ。
 

 とにもかくにも、ようやくトライショーから解放されて一人になった私は、夕刻を迎えたマラッカの町を再び歩き始めた。(この旅行記、いつ終わるの?)
 

Img_2361

 

 

 

|

« 井草八幡宮へ | トップページ | グラタンとカンパーニュと玉川上水 »

2009 シンガポール・マレーシア」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 井草八幡宮へ | トップページ | グラタンとカンパーニュと玉川上水 »