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旅行3日目・夜/マレー爺のグチを聞く編

これまでのあらすじ

 

 トライショーで軽くぼられたことにプリプリしていた私は、気を取り直してリバークルーズに参加することにした。小さなボートに乗って、マラッカ市内を流れる川を揺られる50分の旅だ。
 
 
 それにしても暑い。すでに夕方なのだが、直射日光が顔に、腕に、刺すように照りつける。ボート乗り場では日陰のいすで出発を待つことができたが、いざボートに乗り込むと日陰が少なく、暑いしまぶしいしで不快指数90である。帽子も日傘もホテルに置いてきた自分がうらめしい。せめてサングラスを買っておけばよかった。
 
 
 いざ、ボートは出発して順調にマラッカ川を……進むことなく、すぐに止まった。何ごとかと見れば、エンジンの故障でボートが動かなくなってしまったようだ。まさに踏んだり蹴ったりである。
 
 

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出発した…と思ったら。

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…止まった。右は助けにきたボート
 

 5分ほど待つと、代わりのボートが迎えにきてくれたので、みんなでそちらに乗り移る。ようやくクルーズが始まった。やれやれ。川の両側に、小さな家々が建ち並ぶ。さっきトライショーのおっちゃんに連れて行ってもらった場所も通りすぎたが、陸地から見た景色を、今度は反対側の川から眺めるのはまたオツなものだった。
 
 

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 クルーズの感想は、だいたいそんなところです。とにかく暑かったのです。

 

 船を下りて、町をぶらぶらしながらホテルに向かって歩いた。だんだんと、日が暮れ始めていた。マラッカでは、週末になると夜市が出る。この日は金曜日だったので、さっき通った目抜き通り(ジョンカー・ウォーク)でも、少しずつ出店の準備が始まっていた。

 

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 いったんホテルに戻ると、なんと、カギがあかない。何度カードキーをかざしても、あかない。仕方がないのでフロントに言いにいくと、スタッフのおばちゃんはカードキーを調べた後、「チェックインの受け付けをしたのは女のスタッフだった?」と私に尋ねた。何でそんなこと聞くんだろう、と思ったら、どうやら彼女が私を間違った部屋にチェックインさせてしまったようなのだ。本来、宿泊するはずの部屋は「361」のはずだったのに、なぜか「316」にチェックインされてしまったようだ、と。

 

 おいおいマジかよ、と思ったんだけど、ちょっと待てよ。チェックイン時にもらった翌朝の朝食クーポンを見てみると、ちゃんと「361」と書いてある。要するに、私が勝手に「316」だと思い込んで、関係ない部屋に不法侵入しただけのことだったのだ。しかも部屋に荷物をまき散らし、汗まみれの体でベッドの上をゴロゴロし、ご丁寧にう○こまでしたような気がする……。
 

 ホテルの皆さま、本当にごめんなさい。ちなみに、どうして違う番号の部屋に入れてしまったかというと、フロントの女の子がミスしたのではなく、部屋のドアがあいてたのである。「ああ、私のためにドアを開けてあるのね」と思い込んだ私……。

 

 今度は正しい部屋「361」に入り、休憩後に町へ出た……が、しばらく歩いてふと気付く。私、お金持ってないじゃん!! トライショーのおっちゃんにぼられたせい(←しつこい)だけじゃないと思うが、もともと手持ちが少なかった上に、予想していたよりもお金を使ってしまっていたのだ。夜市でクレジットカードが使えるわけもない。あわててホテルに戻り、フロントでシンガポール・ドルをマレーシア・リンギに両替してもらうことにした。
 

 ところがシンガポール・ドルすらほとんど財布に入っていない。背に腹は代えられぬ、と思い、恥をしのんでなけなしの金を両替してもらったが、フロントの男性のあっけにとられたような顔が忘れられない。日本で言えば「1000円分、外貨両替してください」と頼んだようなものだったと思う。「こいつ、宿泊費払えるのかよ」と思われたかもしれない。

 
 両替してもらったとはいえ、あまりにも心もとないので銀行の場所を教えてもらった。夜なので閉まっていると思っていたのだが、意外にもまだ開いているという(なら、最初から銀行にいけばよかった)。人通りのあまりない道を歩いて、ようやっと銀行のATMにたどり着き、無事に十分なマレーシア・リンギを手に入れたのだった。

 

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銀行への道すがら見た風景。太極拳?

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なんとジムを発見! 外は暑いから?
 

 気を取り直して、ジョンカー・ウォークの夜市へ。地元の人や観光客で、かなりにぎわっている。簡易ステージでは、なぜかカラオケ大会が行われていて、こちらも結構な観客を集めていた。

 

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熱唱するおばちゃん

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カンフーおじさん。すごい人だかり
 

 

 ガチャガチャした感じのおもちゃとか、偽物のサングラスや時計とか、マレーシア独特のお菓子とか、出店にはそんなものが並んでいた。しかし、お腹がすいているので、今はお菓子より何より夕飯である。せっかくマレーシアに来たのだから、ニョニャ料理を食べようと心に決めていた。ニョニャ料理とは、プラナカンたちの伝統料理である。

 

 ニョニャ料理が食べられる店はいくつもあるが、その中でも雰囲気のよさそうな2店に絞りこんだ。そして、すいているけれどもおいしそうなA店、活気があるけれど激コミのB店のどちらに入るかで長いこと迷っていた。2店舗の間を何度も往復したあげく、A店を選んだ。食べ物の選択にかけては、いつだって必死である。
 
 
 
 そしてこの時、A店を選んだことが、私のマラッカ滞在を180度変えてしまった。時を同じくしてA店に居合わせたマレーシア人の爺さんと、友達になったのだ。

 

 メニューがなくて困っている私に彼が自分のメニューを分けてくれたことがきっかけで、私と爺さんは話し始めた。爺さんの名前はアーネスト。これは英語名で、本来は中国系のマレーシア人だという。だけど話せるのは英語がメインで、中国語は少しだけだそうな。

 

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ニョニャ風焼きそばとビール。美味!

 
 

 実は爺さんは2人連れで、もう一人の名前はロン。2人は兄弟で、アーネストが弟で60歳、ロンが兄で70歳だという。アーネストと私はしばらく話しているうちに仲良くなって、3人で一緒に夜市を散歩しようということになった。
 
 

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かき氷を買ってもらいました
 
 
 私は、まさかマレーシアの小さな町に来て、自分より30〜40歳も年上の友達ができるなんて思ってもみなかったので、その状況にコーフンしていた。海外に行って、現地の人とおしゃべりできるなんて、すごいじゃないか! 
 
 
 アーネストは病気で手術したらしく、杖をつきながらゆっくり歩く。しかし気持ちは元気で、よくしゃべる。内容は主に嫁のグチである。聞けば、嫁はもう何十年にもわたってアーネストにつらく当たり続けており、3人の子どもたちが独立した今では、完全に家庭内別居状態で口もきかないのだそうである。私はひたすら聞き役にまわり、「まあ、かわいそうねぇ」とか「それなら離婚しちゃえばいいのに」とか「それ、奥さんひどいよ!」とか、適当に相づちをうっていた。マレーシアの爺さんも、いろいろ大変なんだなと思った。

 

 夜市をしばらく歩いた後、3人でオープンテラスのバーに寄った。ビールでも飲みたいところだったが、夕飯のときに1杯飲み、さらに夜市でかき氷まで食べてしまったのでお腹が冷え冷え。というわけで、ホットのミルクティーにした。バーでミルクティーって……。
 

 

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アーネスト(右)とロン


 

 アーネストは、ずっと嫁のグチを言っていた。その合間に時々はさまれるのが、娘や息子たちの自慢話。携帯で写真も見せてくれた。3人の子供たちはみんなすでに30〜40代らしいのだが、どの人もすごく美人&ハンサムなので、アーネストの奥さんはきっと美人なのだろうと思った。

 

 しかしまあ、アーネストはよい人なのだが、自分のことばかり話すのがタマにキズではある。奥さんは、もしかしたらあなたのそういうところが好きじゃなかったんじゃないかしら、なんて思ったりもしたけど、部外者が適当なことを言うもんじゃないので黙っておいた。
 
 
 そしてアーネストは結局のところ、今の奥さんと離婚したいのであり、誰か新しい伴侶を探しているのだということもだんだんわかってきた。そこへ突然、日本から単身、マラッカに乗り込んできた30歳も年下の女性(私のこと)。小さな町で生涯を過ごすアーネストにしてみれば、まさに「運命の出会い」だろう。彼は私と結婚したそうではあったが、私は夫がいる旨を伝えて丁重にお断りした。それにしても私は「あともう少し早く、君と出会っていたら」と言われることが時々あるんだけど、それって口説いてるようで全然口説いてないですよね? 
 

 3人で、12時ごろまで飲んだ。オープンテラスのバーでは、ミュージシャンが弾き語る声がにぎやかに鳴り響いていた。「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」も流れた。改めて、いい曲だと思った。

 

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 アーネストとは連絡先を交換して、翌日の夜にも3人で一緒に夕飯を食べる約束をした。ホテルの入り口まで送ってもらって、お別れした。こんなに短い旅なのに、出発したときには思いもよらなかった出来事ばかりが起きて、なんだか面白いなあ、と思った。 
 
 

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2009 シンガポール・マレーシア」カテゴリの記事

コメント

アーネスト、若かりし頃カッコ良い気がするのは私だけでしょうか…(汗)
てか、私が行った月曜日とは全然雰囲気が違くてうらやましい!!!
月曜日は当たり前に祭りの後感満載でしたよ…
そしてボートに乗ろうか乗るまいか悩んで乗らなかった自分を、
褒めてあげようと思います…乗りたかったんですけどね…

投稿: おこ | 2009年9月26日 (土) 00時41分

アーネスト、う〜む…若かったころは…
かっこよかったんだろうか…。
私はロンの方が好みだったりするんですけどねー。
この翌日、再びご飯を食べたときにそう思ったのです。

ボート、もしや韓国男子のせいで乗れなかったんでしょうか(笑。
でも大したことなかったですよ〜!

投稿: ayacco | 2009年9月28日 (月) 02時39分

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