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キューバ旅行2:あっさりめのサギ

 キューバ到着の夜が明けて、2日目。宿で朝食をとった後、ひとまず街へ繰り出してみた。
 
 繰り出してすぐ、サギのカモになった。まずは1人目。宿のある路地から大通りにつくやいなや、ノリのよさそうな黒人のあんちゃん(黒人1)に声をかけられる。
 
 「やあ、君たちどこから来たんだい? ジャパン? ジャパンは素晴らしい国だよね!」「キューバは初めて? どこに泊まってるの?」といった世間話が終わると、すぐに本題である。「僕はダンスの先生をしてるんだ。スクールでレッスンを受けると1時間6000円だけど、僕の家でのレッスンなら500円だよ!」。
 
 ダンスのレッスンに興味がないこともなかったので、「また明日にでも」などと返事を先延ばしにして、連絡先だけメモしてもらった。われわれが泊まっている宿のおかみさんを知っているとか、葉巻を安く買える場所があるとか言っていたので、後から考えてみると典型的なサギ師である。記念に写真を撮らせてと言ったところ、「写真を撮られると魂が抜かれると信じてるんだ」などともっともらしいことを言って撮らせてくれなかった。犯罪の証拠を残されたら困ると考えたのだろう。抜かりない。
 
 黒人1と別れて1分もしないうちに、今度は別の黒人のオッサン(黒人2)に呼び止められた。「君たち、○○の宿に泊まってるんだよね? 僕、あそこのオーナーの弟なんだよ。ゆうべ、日本人が泊まりにきたって話を聞いたよ」。結論から言うと黒人2もサギ師なのだが、「宿のオーナーの弟」と名乗られたために、すっかり油断してしまった。後から考えてみると、どうやら私たちが黒人1と話しているときの会話を黒人2が近くで聞いていて、宿の名前などの情報をチェックしていたようなのである。これまた抜かりない。
 
 黒人2は、「今日は葉巻フェスティバルの日なんだ。昼の12時までなら葉巻が半額で買えるよ」と持ちかけてきた。葉巻には興味がないので適当に流していたのだが、「葉巻がどこで買えるか知ってる?」「場所を教えてあげるよ」と言われ、場所を教えてもらうくらいなら……と案内されるハメになってしまった。これもひとえに黒人2が宿のオーナーの弟だと信じていたためなのだが、まさにネギしょったカモである。
 
 黒人2はちょっとした観光案内を織り交ぜながら道を歩き、最終的にビルの中へ入っていった。フロアにはいくつかのドアがあり、ドアの前には刑務所のような鉄格子があった。黒人2が声をかけると、中から黒人女性が出てきて鉄格子のカギを開けた。
 
 黒人2にうながされて中へ入ると、そこは「葉巻店」といった雰囲気ではなく、ただの薄暗くて狭い部屋である。ダークな香りがぷんぷんする。
 
 ……あやしい。というか、危ない。こりゃ、いくらなんでも危ない。オーナーの弟だろうがなんだろうが、危ないもんは危ない。
 
 見れば、連れはいつの間にか黒人2にうながされるままソファに座り、葉巻を見せられている。ここでソファに座ったら試合終了だ。違法な葉巻を高値で売られ、運が悪けりゃ警察に逮捕されて強制送還である。まあ、それは大げさにしても、真っ当な店ではないことは明らか。私はソファには座らず、意を決して「葉巻を買うつもりはない」と黒人2にハッキリ伝えた。
 
 WHY?
 
 このとき黒人2が言った「WHY?」を、私はきっと忘れないと思う。身の危険を感じるほどではなかったにせよ、その口調には凄みがあり、「なんで葉巻を買わねぇんだコノヤロウ」といういらだちがありありと浮かんでいて、大変にドキドキした。
 
 しかしその後は意外とあっさりしたもので、買う気がないとわかると黒人2はさっさと部屋を出て、通りで「じゃあね」と別れた。黒人2がホンマもんの悪い人じゃなくて、よかった……。
 
 黒人2とのやりとりでサギの手口を十分に学んだわれわれは、その後、同様に声をかけられてもキッパリと断り続け、カモられることはなかった。どの人も、カモれないとわかるとあっさり身を引いて笑顔で別れてくれるのが、ハバナのサギ師のいいところと言えばいいところである。
 
 
 
 

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